2015年8月10日月曜日

【音楽】Туган тел (母語):タタールなら誰もが知る歌

タタール文化を語るうえで、歌や踊りを切り離して語ることはできない。

歌や踊りの伝統が深く根付いたタタール文化だが、
当サイトでは伝統的なものから現代のものまで、様々なジャンルの歌を通じてタタール文化の一端を伝えていきたい。



今回紹介するのが「Туган тел」、トゥガン・テル。
日本語だと「母語」という意味になるこの詩は、タタール人なら誰もが知るもの。元々はガブドゥッラ・トゥカイ(Габдулла Тукай)という、タタールの国民的詩人によって書かれた詩の一篇である。(左図)


トゥカイはロシアのプーシキン、ウズベクのアリシェル・ナバーイーのような民族を代表する詩人の一人だ。タタールを代表する詩人であるトゥカイは、現代タタール語の正書法にも多大な影響を与えたという。


トゥカイの詩の中でも最も知られているものの一つがТуган телである。
現在タタールスタンでも広く行われているタタール語保護活動でも頻繁に使われるこの曲は、近年ではタタール語のシンボルとしての役割も担う。
タタール語話者の間では広く歌われるほか、日常的にタタール語を使わない人も旋律は知るほど有名だ。



Туган телは後になって旋律がつけられ、タタールスタン国内外の歌手によって広く歌われている。
また、タタール関連のイベントを行う際には必ず流れるし、全員で歌うことも珍しくない。
例えば筆者が以前参加した「タタール語オリンピック」では閉会式に大々的に歌われたし、大会期間中も参加者同士で夜な夜な集まっては歌ったり踊ったり・・・ということがあったが、その時に必ず歌われる歌のひとつだった。


この記事では、筆者が個人的に気に入っているКазан Егетләре (カザンの青年たち)というグループによって歌われているクリップと共に歌の紹介をしようと思う。



И туган тел,  и матур тел, әткәм-әнкәмнең теле!
ああ母語よ、ああ美しいことばよ、わたしの父と母のことばよ!

Дөньяда күп нәрсә белдем, син туган тел аркылы.
この世で多くのことを知った、おまえ — 母語を通して

Иң элек бу тел белән әнкәм бишектә көйләгән,
ずっと昔にこのことばで 母がゆりかごで子守唄を歌った
Аннары төннәр буе әбкәм хикәят сөйләгән.
そして一晩中祖母は昔話を語った

И туган тел! Һәрвакытта ярдәмең белән синең,
ああ母語よ!いつだっておまえの助けで
Кечкенәдән аңлашылган шатлыгым, кайгым минем.
幼いころから喜びも悲しみも理解させてくれた

И туган тел! Синдә булган иң элек кыйлган догам:
ああ母語よ!おまえで初めて神に祈りを捧げたのだ
Ярлыкагыл, дип, үзем һәм әткәм-әнкәмне, ходам!
「お許しください、わたしと、そして父と母を、神よ」と

ちなみにこの歌はタタールスタンのみならず、ロシア国外のタタール人も知る歌である。
もしタタール人と関わる機会があるなら、この曲の1フレーズだけでも口ずさめばあっという間に友人になれるだろう。



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