例えば筆者がウズベキスタンに留学していたときには、面白がって隣国タジキスタンのテレビを観ることが多々あったが、歌番組となると「タジキスタン〜、タジキスタン〜」と老いも若きも歌っていた。(クリックで、曲の例に飛べます)
もちろんウズベキスタンもラジオを聞いていると1時間に1曲は"その気のある曲"がかかるし、そのまた隣国のトルクメニスタンは言及するまでもない。
そして、ロシアのなかの一民族共和国であるタタールスタンもご多分に漏れない。
今回は、タタールスタンに暮らす人なら誰もが一度は耳にしたことがある、
タタールスタンの"国名連呼系"(と密かに呼ぶことにする)の中でも有名な歌の一つを紹介したい。
ちなみに、テュルク系だと国名連呼系の歌には必ず「vatan / ватан」という語が登場する。祖国という意味だから、これは当然ともいえよう。所有接尾辞がついてvatanimだとかватанымとなることが多い。(私の〜という意味に変貌する)
もちろん言語によって発音は微妙に異なるが、基本的にはヴァターンだとかヴァタン、ヴォタンとか、大きな変化自体はない。タタール語もватан(ым)である。ちなみに冒頭で紹介した、ペルシア系のタジク語のパンチの聞いた曲でもватанと言っている。
ズバリ、歌のタイトルはМин яратам сине, Татарстан
タタール語をご存知の方なら「なんと直球的なタイトルなんだろう」だとか「いかにも」と思うことだろう。
Мин(私は) яратам(好きです) сине(君が), Татарстан(タタールスタン)
より自然に日本語の訳をつけるとすれば「おまえが好きだ、タタールスタン」とでもなるだろう。早いところ、要はタタールスタン愛を叫んだ愛国ソングなわけである。
Салават Фәтхетдинов どうでもいいが、筆者はタタール人の友だちから、よく彼に似ていると言われる |
タタールスタンの有名な歌手のひとりで、国民的歌手の一人にも選ばれている。彼もまた、以前本コーナーで紹介したリシャット・テュフベトゥッリンと同じく、お隣のバシコルトスタン生まれのタタール人。バシコルトスタンでは名誉歌手の称号を得ている。
また、歌手であると同時に演出家でもあり、スポーツ選手でもある。レスリングやウエイトリフティングなど、とにかく何でもアリな多芸な人で、近年はモータースポーツの選手としてロシア政府の公認栄誉賞である「スポーツマスター」の称号まで授与された。(ちなみにロシアのプーチン大統領もサンボと柔道のスポーツマスター称号を持つ)
そんな多芸すぎるサラヴァト・フェトヘトディノフのプレイリストの中でも最も有名な歌の一つが、冒頭でもご紹介したМин яратам сине, Татарстанである。
ちなみに8月30日は「タタールスタンの日」であり、映像メディアではこの歌がひっきりなしに流れていたので、筆者は数日ほどこの歌が頭から離れなかった。(そして今も記事執筆のために聞いていて、何だか中毒性があるように思う)
Мин яратам сине, Татарстан,
おまえが好きだ、タタールスタン
おまえが好きだ、タタールスタン
Ал таңнарың өчен яратам,
緋色の夜明けがために好きだ
緋色の夜明けがために好きだ
Күк күкрәп, яшен яшьнәп руган
雷が轟き、稲妻が走る
雷が轟き、稲妻が走る
Яңгырларың өчен яратам.
雨がために好きだ
雨がために好きだ
Мин яратам сине, Татарстан,
おまえが好きだ、タタールスタン
Горур халкың өчен яратам,
誇り高き民族がために
Җан эреткән әнкәм телең өчен,
魂を溶かす母なる言語がために
Татар телең өчен яратам.
タタール語がために好きだ
Мин яратам сине, Татарстан,
おまえが好きだ、タタールスタン
Тугайларың өчен яратам,
肥沃な大地がために好きだ
肥沃な大地がために好きだ
Тукайларың, Сәйдәшләрең өчен,
トゥカイ(のような詩人たち)、セイデシェフ(のような音楽家たち)がために、
トゥカイ(のような詩人たち)、セイデシェフ(のような音楽家たち)がために、
Җәлилләрең өчен яратам.
ムサ・ジェリル(のような英雄たち)がために好きだ
ムサ・ジェリル(のような英雄たち)がために好きだ
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